『もう、どんな問題も怖くない』
社長の“恐怖”を解放し、ハイパフォーマー社員をつくる
株式会社 小菅工務店
代表取締役小菅 晶 氏
事業内容:2006年設立、京都西エリアを中心に新築・リフォーム住宅などの家づくりを得意とする地域密着型工務店。ものづくりを通して顧客と共に豊かな住環境を創造する、という経営理念のもと、住む人が快適に心地よく暮らせる家を安心・安全に提供している
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逆境での導入。聞きたくない“真実”を金脈に変える
コロナ禍の2021年から2年程導入していただきました。導入の背景を教えてください。
小菅:尊敬する先輩に連れられて行ったゴルフで紹介されたのが、鈴木さんでした。「すごい会議」のことはよく知らないものの、先輩からの紹介では断れないですよね(笑)。
後日、導入を検討するために他社のセッションをオブザーブさせていただき、強烈に印象に残ったことが一つありました。参加者全員が、会社や自分に関する“ひどい真実”を次々に口にしていくシーンです。
いくら先輩からの紹介でも、『こんなことをされたら経営者としてはたまらない!僕なら絶対に聞きたくない!』と感じた反面、そう思うということは、自分はこれまで“そこ”に触れずに来たんだな、と思ったんです。きっとそこに会社の問題が隠されている、とも。
『絶対に嫌だ』と思いながらも、どんな期待をもって導入を決められましたか。
小菅:当時は、その先に業績が悪くなることが見えていて、実はこの10年、15年で一番苦しい時期でした。
建築業界に大きな痛手となった木材価格急騰によるウッドショックをもろに受け、お得意先との取引も断らざるを得ない状況。自力で解決できないとわかっている以上、社員の力を借りて苦境を乗り切るしかない。打開策を見出したい、とワラにもすがる気持ちでした。
とはいえ、業績が悪い上に“ひどい真実”を聞くなんて、僕には最上級にキツいこと。でも「ストレスを感じるものにこそ学びがある」というかつての先輩の言葉を思い出し、『少しでも何かを変えたい、必ず学びがあるはずだ』と、導入を決めました。
地固めの時期。社員のポテンシャルが光りだす
「すごい会議」の年間目標はどのように設定しましたか。
小菅:通常の「すごい会議」は高い目標を推奨しますよね。でも、あのタイミングで利益を追っても空回りするだけだとわかっていたので、鈴木さんは僕らの状況をくみ取り、定性的な面を優先してくれた。『どんな会社にしていきたいか』という土台づくりです。
もちろん、少しでも売り上げにつながるよう行動しましたが、あくまで一歩一歩進むあり方でした。
いざセッションを開始し、懸念していた“ひどい真実”の体験はいかがでしたか。
小菅:意外にも、僕が想像していた耳を塞ぎたくなるような意見は一つも出てきませんでした。例えば、給料が安いとか、キツい、辞めたいとか。ネガティブなことは全く出ず、「今の会社をよりよくするために、どんな課題があるか」という、前向きさを前提とした建設的な“真実”ばかりでうれしかったですね。
その場に限らず、「すごい会議」は終始ポジティブな場だったと思います。
メンバーの率直な意見を聞いて、どんな発見がありましたか。
小菅:以前から彼らは思ったことを口にしているように見えていたけれど、実際は違っていて『こんなことを考えていたのか』と改めて感じました。
一人ひとりの意見を聞くと「それめっちゃいいやん!」「俺には絶対にない発想」と、言いたくなるような目からウロコのアイデアばかり。驚きましたね。
僕は経営も仕事も“自分がやる”という意識が強く一人で背負いがちでしたが、もっと社員に任せて彼らが主体的に会社を動かしていくやり方もあっていいんだ、と、発見の連続でした。
コーチが言うには、何を起点にメンバーのポテンシャルを発掘できたと思いますか。
鈴木:まず、会議という“場”が新たなコミュニケーション機会を生み出したと思います。そしてみなさんが『小菅さんにアイデアを伝えてもいいんだ』と、知った心理的安全性も大きいはず。
「すごい会議」は、“社長に意見する”のでなく、社長を含めた全員で問題と向き合い、“場”に対して意見を挙げる構造なので、本音を口にしやすいんです。現場を見ている彼らが一番アイデアを持っている可能性は高いので、意見を聞かない手はないですよね。
小菅:「こんなのどうですか」と、彼らが進んでアイデアを提案してくることが非常に増えました。僕の意思決定にも間違っていると思えばコメントしてきますし、明らかに以前のコミュニケーションゾーンを超えてきています。
「勝手に解決してくれた」目覚ましい人材成長
印象的な問題解決があれば教えてください。
小菅:当時は業績の落ち込みを取り戻そうと、なるべくストック型の“インフラ提供や契約体系などで継続的に売り上げが発生する”仕事を取りにいきました。
ただストック型の仕事は、都度受注するフロー型案件と比べると金額も安く、いかに工数をかけずに量をこなせるかが重要。そこで『業務管理に人手をかけずに済むよう仕組みをつくりたい』と、メンバーに伝えたんです。
するとそのイメージを起点に各部門が連携し始め、「どうすればできるか」と勝手に問題解決してアプリの管理システムを作り上げてくれた。内容も素晴らしく、彼ら主導で完成させてくれたことに感動しました。
何より、物ごとを構築するプロセスや問題解決の思考が風土として根付いたことがうれしかったですね。部門間の協力体制も生まれ、バラバラだった組織が一つにまとまった感覚がありました。
メンバーの方の、“物事を構築するプロセス”や問題解決の思考“はどのように培われたと思いますか。
小菅:「すごい会議」で新たな思考回路と手順を覚えたということかな。そもそも、以前は会議のやり方すら知らなかったんです。僕らの会社は建築の現場からきた人間が多く、会社らしい会社に属したことのないメンバーも多い。“組織”や“仕組み”が大事と言われてもピンときません。
そこを、ゴールに向けてミーティングで意見を出し合い、協議し、意思決定して進める。その組織立った解決手順を教えてもらったことで、仲間と協力して一つの解決策を見つける文化が当たり前になった。「どのようにすればできるか」と思考するフレーズも、今では口癖になっています。
社長の“恐れ”がなくなると、社員は自由に動きだす
社長ご自身の変化として、以前とはどんな“違い”を実感されますか。
小菅:僕自身のバリアが取れましたね。以前は、社員にネガティブなことを言われるのが嫌で、何を言われるかわからない状況で話を聞くことを無意識に避けていたんです。
でも“ひどい真実”のふたを開けてその恐怖がなくなった。
問題の捉え方が変わったことも大きいかな。以前は、“問題=経営者の問題”であり、僕一人で受け止めるべきものだと捉えていました。だから社員に意見されることは、真正面からボールを投げつけられる攻撃のようなものだと、僕が勝手に解釈していたんです。
でも、問題は“会社の問題”であって“僕の問題”ではない。経営者として社員と一緒に問題に向き合えばいい。そう気づいて楽になりました。
僕の態度が変化したことで彼らも問題を挙げやすくなり、同時に『自分たちで解決しよう』とも思ってくれているのがわかる。今では『どんな問題があっても怖くない』と思えます。
メンバーだけでなく、社長にとっての“心理的安全性”も生みだせたのですね。
小菅:トップダウンでやってきたのは、効果的だからという理由もありますが、一つには僕が”怖がっていた”からなんです。聞きたくないことを聞かずに済むよう、先に指示して封じていたんですね。
僕が恐れずに任せられるようになったことで、彼らは自発的に知恵を絞って動くスタイルに変わり、結果的として僕も楽になりました。
鈴木:小菅さんの“聞き方”が変わったことは僕も感じます。当初は、小菅さんと他のメンバーの方の視座にギャップがあり、彼らは『言われたからやる』ように僕には見えていました。
でも現在は、小菅さんの意思決定のプロセスを間近で見ている上に相互のリスペクトもある。さらにこの1年間で、“理想を現実にできる”手応えも感じていただけた。
みなさんの目線がそろってきた印象です。
長期成長への構造改革。「確かな成果が生まれ始めた」
導入によって、売り上げにどのような変化が生まれましたか。
小菅:当時は業績を追う状況ではなかったので、即効性のある解決策は生まれませんでした。でもそれは最初からわかっていて、あのとき投資したから人が育ち、風土が変わった。その分、今になって数字に成果が現れてきているので、ある意味計画通りかもしれません。
というのも、ここ1年で売上利益を生み出す構造を変えようとしていて、その取り組みが成功しつつあります。
以前は二次請けのような仕事が多く、工数の割に利益率が上がりにくい構造でしたが、『長期的に発展し続けるために何が必要か』と考えると、僕らが一次請けとしてビジネスの起点となり、安定して継続的に売り上げをつくり出せる新しい事業体が必要でした。
その問題解決が「すごい会議」を通して生まれ、新たなビジネスの仕組みがうまく回り始めた今、売上利益も着実にアップしています。
導入したことで、社長が最も喜びを感じたエピソードを教えてください。
小菅:会社を今後どうしていきたいか、という会話のなかで、「小菅工務店を、愛され必要とされる会社にしたい」と言ってくれた社員がいたんです。僕からすると『この子がそんなことを言ってくれるのか』とギャップに驚いたし、会社への期待を見た気がして最大のほめ言葉に感じました。
精神的にも厳しい時期だったので、みんなが会社のことを真剣に考えてくれている姿に救われ、それを眺めていられることが幸せでしたね。
自分たちの実力を確かめる。成長へのステップ
現在は、コーチ抜きで「すごい会議」を内製化して実施されていると伺いました。
小菅:自分たちでどこまでできるのか、実践で試しています。何もない状態から物ごとの進め方や問題解決の方法を学び、会議の方法を学んだ。「ちょっと会議しよう」と会話する文化が育ち、現在は目に見えて成果も上がっています。
でも、自己流の「すごい会議」には限界があることもわかっているので、自分たちで精一杯までやりながらも、限界の手前でもう一度鈴木さんに入ってもらい、しっかり成果をあげていく予定です。僕らだけではいつかマンネリ化して低迷するのが見えていますから。
鈴木コーチの素晴らしさ、そしてコーチの存在価値をどう感じているか、お聞かせください。
小菅:鈴木さんはいいですよ、鈴木さんでなかったら僕は導入していません。空気感も含めてマイルドに、でも客観性を持って的確な質問で導いてくれる。“場”をつくるのがうまいんです。
「すごい会議」はシステムとコーチの両輪。システムももちろん素晴らしいけれど、コーチの存在がそれ以上に重要だと思う。うちの会社にマッチするのは鈴木さんです。
「“すごい会議”ってなに?」と聞かれたら、なんと回答されますか。
小菅:これ、とは答えにくいですが、万人ウケはしないけれど必要としている人は相当たくさんいるんじゃないかな。拡大フェーズにある会社や若い社長とスタッフがいる組織には、ハマる気がします。
『社員に主体性を持たせて活躍させたい。それによって業績を伸ばしたい』という考えの会社には、鈴木さんが合っていると思いますよ。
小菅工務店の今後の目指す姿を教えてください。
小菅:常に思っているのは、社員が満足して幸せに働ける職場環境にしたい、ということです。会社が自己成長の場であり、楽しみを感じられる場であってほしいじゃないですか。
今までの10年以上に、社員の豊かさと会社の利益創出を意識しながら、これからの10年を積み上げていきます。
ありがとうございました。
(取材日:2023年9月21日、場所:株式会社 小菅工務店、インタビュアー:渡辺恵)
Day 2023年11月14日